スタッフエッセイ 2009年1月

「なーんか、何か、いいことがある〜」

前村よう子

 エッセイテーマの「なーんか、何か、楽しいことがある〜」は、娘が幼い頃の口癖だった。夫の同僚や友人、私の友人や卒業した教え子たちが遊びに来てくれた時や、子ども会の宿泊行事に参加した時など、就寝時間になってもなかなか眠ろうとはしない娘に「なんで早くお布団の部屋に行かないの?」と尋ねると、いつも「なーんか・・・」と返してくるのだった。どうやら娘は、自分が寝てしまってから、大人達は美味しいものを食べたり、楽しい時間を過ごしているのではないかと考えていたようだ。確かに、美味しいお料理やお酒(ただし私は下戸)、そして楽しい会話は、娘が寝入ってからも続くのだから、「なーんか・・・」という推測は正しかった。「いいことがある〜」の最たるものは、子ども会のキャンプだった。

 娘が4歳の時に今の団地に引っ越した。保育園の年長さんの頃から小学校6年生の卒業まで、団地の子ども会に属して、様々な活動に参加してきた。全世帯でも110軒ほどの規模の団地ゆえ、子ども会役員も2年に一度の割合で回ってくる。月一回の廃品回収や役員会議、春の歓迎会、夏のキャンプ、夏祭り、クリスマス会、卒業生を送る会等、団地子ども会単独で行う行事の計画立案・実行だけでも大変なのに、地域の連合子ども会の役員や行事への参加等、今思えば、よくあんなに地域活動に参加していたなあ、若かったのだなあと思う。

 でもしんどい事ばかりじゃ、大人だって続かない。団地の子ども会仲間とでも言える大人たちの関係性が良かった。「なかよし子ども会」の親たちは、時には、行事開催についての詳細や仕事との折り合いなどで意見がぶつかることもあったが、子どもを通じて得た新しい関係性を誰もが大切にしようとしていた。そんな大人達にとって、夏のキャンプで、夜、子どもたちが就寝してからのミニ宴会(お菓子と缶入りビールやカクテル、ジュース等)は、年に一度の楽しみでもあった。子どもの話、学校の話、仕事の話、団地の話等々、話題は尽きなかったのを覚えている。特にうちの子ども会は、妻だけでなく夫たちも積極的に参加していたので、それぞれの夫婦間の個性も出ていて、対人の仕事に携わっている私には、得るものも大きかった。

 そんな子ども会も、娘の少し下の世代で子ども達の数が減り、先細り、とうとう活動も停止してしまった。少子化やニュータウンの高齢化という流れに、うちの団地も押し流されてしまったようだ。

 でも、当時の子どもたちが、今、大人になろうとしている。この春に結婚する子、教諭として教壇に立つ子、親になった子、それぞれが新しい時代を築こうとしている。子ども達の未来にはきっと「なーんか、何か、いいことがある」。私はそう願わずにはいられない。

(2009年1月)