スタッフエッセイ 2008年12月

涙でリフレッシュ?!

桑田道子

あっという間に年末になった。円高だから海外へ、と景気のいい声が聞こえる一方で、空港が発表した年末年始の出入国者数推計は、昨年に比べ約10%減だというから、寝正月だったり、年末に出来ない大掃除を年始からだったり、自宅で過ごす人も多いかもしれない。というわけで、今回は自宅で見る映画をテーマにしてみよう。

私はわりと映画館に行くのは億劫ではないほうで、前売り券を買うほどの情熱はないが、映画の封切り情報は必ずチェックして、見てみたいと思ったものは水曜のレディース割引やレイトショー割引を利用したりして、見にいくようにしている。このごろは映画のDVDも廉価版が出たり、安く手に入るものが増えたし、レンタルにしても、店舗に行かず、ネット経由で借りて郵便ポストで返却する手軽な方法もあったりするので、自宅で映画を楽しむ人も増えているだろう。ホームシアターを構築されている、うらやましい人もいる。

ストレスマネジメントの講座で触れることもあるが、「泣く」のも「笑う」のもストレス軽減には効果的である。ワーワー泣いたあとに、なにかスッキリしたと感じたことのある人も多いと思うが、タマネギを切って出る涙と、感動したり、悲しくて流す感情的な涙とでは成分が違うそうである。感情的な涙には、ストレスに反応して分泌されるホルモン(ストレスに反応して心や体に緊張を与えるホルモンや免疫物質)が含まれていて、涙と一緒にストレスホルモンを排出する、重要なはたらきがある。

一方「笑う」と(クスッとかではなく、おなかを抱えて笑うような大笑い)、体内では「ナチュラルキラー細胞」というものが増える。この細胞はがん細胞やウイルス感染細胞をやっつけてくれる、頼もしいものだが、なぜ増えるかというと、人の自律神経には、「怒りや恐怖」を感じたときに作用する交感神経と「安らぎや安心感」を感じたときに作用する副交感神経があり、人が笑うときには、この交感神経と副交感神経が頻繁に切り替わり、脳への刺激を生み出すので、そこでナチュラルキラー細胞が活性化するといわれている。笑いが身近な生活と、健康とは密接に関係しているのである。

じゃあ、どうやって泣こうか、笑おうかと思ったときに、映画を見て、というのはとっても良い方法である。聞くところによると、定期的に「泣こう会」なるものを結成して、泣ける映画を見たり、泣ける本を読んだりする人もいるらしい。

そこで、感動、涙、家族をキーワードに、オススメ映画を選んでみる。もちろん好みはそれぞれ違うので一概に案内できるものではないが…
◆ミリオンダラー・ベイビー(2004/ヒラリー・スワンク、クリント・イーストウッド)
痛々しいシーンも多いけれど、本気で生きるとはこういうことなのかな、と考えさせられる。
◆アイアム・サム(2001/ダコタ・ファニング、ショーン・ペン)
幼い娘の父への愛情や、知的障害のある父のまっすぐな娘への愛情、コミュニティの優しさを感じる。杓子定規に外から家族の良い悪いを決めてしまうことのおかしさも…。
◆ライフ・イズ・ビューティフル(1998/ロベルト・ベニーニ)
背景にある戦争の不条理さは重いが、父の家族を思う気持ち、一生懸命さに胸打たれる。
◆パーフェクト・ワールド(1993/ケビン・コスナー)
もっと違う結末を望む気持ちもあるが、いろんな痛みを背負ってきた男性が、少年との間に築いていく友情があたたかく力強い。
◆クレイマー・クレイマー(1979 /ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ)
超有名な「クレイマーVSクレイマー夫人」。父も母も決して完璧な人ではなく、子も注意されるところのないようないわゆる「いい子」ではない、だからこそ家族がしんどい思いもしながら向き合っていく様が感動的で、父子の朝ごはんのシーンが忘れられない。
◆奇跡のシンフォニー(2008/フレディ・ハイモア)
楽器の演奏をされる方、セッションの喜びを知っている方ならきっと、純粋に、音楽に宿る力を感じさせられる一本。少年の目が印象的。

いざ選んでみると、私が何度も何度も繰り返して見ている大好きな映画、我が家のDVDの棚とはまた違うラインナップになったが、時間のとれる長期休暇、何をしようかな〜という方にはご高覧をおすすめします。

それから、映画館で見る1本は…実は今回はハリウッド系のお正月映画に好みのものはなかったのだが、「ぼくのおばあちゃん」は良かった。主演の菅井きん氏が最高齢で初主演と評判だが(ギネス認定されたとか)、毎日毎日の積み重ねが人生をつくっていくのを感じる映画だった。衝撃的な出来事とか、大きな見せ場があるわけではないけれども、一人一人に人生があって、その人たちがつながるところに生まれるぬくもりやかけがいのなさを思う、あたたかな1本だった。

日常のなかで、気を張って生活する局面が多いと自分の感情は後回しになりがちかもしれないので、「最近泣いたのはいつ?大笑いしたのはいつ?」と考えてみても、思いあたらなかったりするかもしれない。けれども、よく出来た映像は、たった約2時間で、その作品の世界にひき込んで、見るものの心を揺さぶるものなので、日頃忙しくしていて、自分の気持ちを見つめてみたり、浸ってみたりする時間を持たない人こそ、このまとまったお休みにそんな機会をつくってみられるのもいいのではないかと思う。

あとは私の場合、ガエル・ガルシア・ベルナルが大好きなので(チェ・ゲバラのモーターサイクル・ダイアリーズやバベル、最近ではブラインドネスに出演)、彼の次作を待ちつつ、DVDで楽しむ予定。

最後になりましたが、今年も多くの皆様にお世話になり、ありがとうございました。みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

(2008年12月)