スタッフエッセイ 2008年12月

オーダー

長川歩美

 ファーストフードでのオーダーが難しいと思うのは私だけだろうか?店のカウンターでメニューを見せてもらうや否や「いらっしゃませ、ご注文をどうぞ♪」。パッと目に入るたくさんのバーガー類やドリンク類からささっと1つずつを選びとり、さらにナゲットのソースにポテトのフレーバー・・ぐらいまではなんとかなっても、店によってはパンの種類や野菜の好き嫌い、ドレッシングやトッピングなども選ぶとなると、それらを組み合わせた時の味がイメージできないことがある。後ろに人が並んでいたりすると、思わず「お任せします。」と言いたくなったり。注文を聞かれるまでの時間が短かいのに、それぞれ選択の余地がありすぎる。まぁなんらか選ぶのだけれど。

 先日研修でニューヨークに行った折に、何度か一人でファーストフードを利用する機会があった。最初に訪れたのは、オーガニックバーガーのお店、その名も「バーガー」。お洒落なカフェのような雰囲気で、店内には食べ物の写真が1枚もなかった。うーん、視覚の手がかり無しで選ぶのか。当然のことながらすべて英語で書かれたメニューを出され、やはり即座に「ご注文は?(英語)」・・よくわからない。だって日本でもとっさには選ぶの難しいのに。どうやら、基本となるバーガーを選び、中に挟むものを選んでいくらしいが、英語なのですぐに目に入ってこないというか、どれがどう違うのかがよくわからない。

 適当に選んでもいいのだけれど、食いしん坊の私はちょっと食い下がってみることにして、「あなたのお薦めは?」とカウンターの店員さんに聞いてみた。すると、20代前半くらいの男性店員がにこっと笑って「オーガニックビーフバーガー」を薦めてくれた。「よし、それだ!」と基本が決定。次はトッピング。ベーコンとチーズを注文したら「チーズの種類」「肉の焼き加減」「ドレッシング(ソース?)の種類」を次々尋ねられる。英語での説明がはっきりわからないのと、選択肢の多さ(チーズだけでも7種類くらい)に「うーん!」と腕組みしてしまったが、店員さんが「がんばって!」と励ましてくれながら説明を続けてくれる。なんだか「ベストをつくそう!」みたいに気になって(笑)、無事注文終了。
 
 ベーコンの発音が悪かったのか、出てきたバーガーに挟まっていたのはチーズのみだったが「まぁいっか」。出来立てバーガーにかぶりつきながらガイドブックを読んでいると、「バーガー」では「アップルシナモンベーコンチーズバーガー」という組み合わせが人気があることがわかった。「今からでも、アップルシナモンとベーコンはさんで〜!」とお願いしたい気持ちを抑えて完食(笑)。次回はぜひ!
 
 数日後に入った「パパイヤキング」というホットドッグのお店では、あまりの混雑具合とトッピングの豊富さにホットドッグは断念。本当に数多いドリンクの中から、フレッシュパパイヤジュースを注文することにした。それでもカップのサイズ、蓋・ストローをつけるかどうか、スムージーとジュースのどちらがいいかなど、いろいろ聞かれる。日本と少し違うと感じたのは、ここでもやはり店員さんが、私を日本人と知って「がんばって、あなたの好みのものを選ぶんだ!」という励ましを含んで、懸命に説明してくれること。余裕をもってこちらが選ぶのを待ってくれる。後ろに並んでいる人も同様。大げさだけどなんだか選ぶ勇気が湧いてくる。そうして選んだ甲斐あって、ここのパパイヤジュースはくせがなくすっきりして、それでいてフワフワにきめ細かく泡立っていて、とっても美味しかった。

 半年ほど前に、大阪は梅田駅前の少しあやしげな雰囲気の古い飲食街で、カウンターのみの魚料理の店で食事していたときのこと。バックパッカーの白人男性がふらっと入って来られてカウンターの端の席にすわり、隣の席にいた日本人男性が食べていた魚の煮付けを指差して「これと同じものを。それとビール(英語)」と注文した。品書きを見てもわからないと思われたのか。・・が、その日本人男性の食べていた魚は高級魚の「キンキ」の煮付け。軽いフレンチのコースと同じくらいの設定だった。きっとその白人男性は、小さな気安そうな店で魚料理をたった一皿を注文しただけなのに、とびっくりされただろう。箸は進んでいたようなので、たぶん美味しかったとは思うけれど。

 今回初めてニューヨークに行ってみて、アメリカの自己主張を大切にする文化と、日本の「言わぬが花」的文化との感覚の差を感じたように思う。旅行先で、土地勘がないなりにもここにしよう、と店を選んでなにかをオーダーしてみると、料理の当たり外れやハプニングもあるだろうが、ツアーで組まれた食事とはちがった実感のある貴重な体験ができると思う。とりあえず今の自分としては、バックパッカーの男性にキンキについて説明できて、ファーストフードで自分の好みを表現できる英語力をまずは身につけたいかな。

(2008年12月)