スタッフエッセイ 2008年8月

映画「西の魔女が死んだ」を見て

前村よう子

 私は映画が好きだ。映画に限らず、舞台上で演じられる演劇、ミュージカルをはじめとして、テレビドラマやアニメ、小説、漫画に至るまで、物語られるものが大好きだ。そんな私だが、20代の頃に映画館で痴漢に遭って以来、映画館で映画を鑑賞することは避けてきた。家族や友人と一緒ならともかく、一人で鑑賞するのは怖かった。一緒に行く人がいなければ、もっぱらレンタルした作品を自宅で鑑賞していた。

 一人でも平気で映画鑑賞ができるようになったのは、ここ8年位のことだ。きっかけは、自宅近くにシネコンができたことだった。上映1回毎に観客は全て入れ替わり、座席を事前に指定でき、その折に好きな場所を選べる。また、大阪の多くの映画館では水曜日がレディースデーであり、1作品1000円で鑑賞できる。これらの特典のお陰で、女性客が多い水曜日に、一番通路よりの席を確保すれば、より安心して映画鑑賞ができるようになった。

 そんな私が、はまりにはまって、何度も映画館に足を運んだ作品がある。「西の魔女が死んだ」という映画だ。ある理由から学校に行かないことを選択した中学生の少女が、離れて暮らしていた母方の祖母宅でしばらく過ごすことになった。映画では、自然の恵み豊かな祖母宅での数週間の生活と、少女と祖母との交流が、淡々と描かれている。

 何も大きな事件は起こらない。いや、生活の中の小さな事件は起こるのだが、最近の映画によくあるような暴力的な出来事が起こることはない。ただただ、日々の慎ましやかで、限りなく優しい生活が淡々と描かれている。

 何の事前情報もなく、レディースデーだからとこの作品を見た私だったが、映画が始まって約5分後に祖母役の女優さんが登場してから、号泣しっぱなしだった。そこには私の母方の祖母が居たからだ。

 この作品の祖母は、イギリスからやってきた女性で、日本の中学で英語教員をしている時に、少女の祖父である夫と出会い、結婚し仕事を辞め、夫との愛を育み、少女の母の子育てと家事に専念してきたという設定なので、生粋のイギリス女性である。私の祖母は生粋の日本女性なので、見た目も服装も、住んでいる家も、作るお料理も全く違う。でも、私にとって、この映画に出てくる少女の祖母は、私の祖母そのものだった。

 孫の全てを包み込み受け入れようとする暖かさと優しさ、家事の一つひとつに対する細やかな心遣い、自然を愛する姿勢、でも、自分の信念については一本筋が通り揺るぎない強さを持つ。私の知っている祖母は、まさにそういう人だった。私は祖母が大好きだった。映画の中で少女が口癖のように言う「おばあちゃん、大好き」というセリフは、幼い頃、いつも私が言っていたことでもあった。

 この映画を見れば、いつでもおばあちゃんに会える、そんな感覚を感じ続けた2時間だった。もちろん、映画のストーリーそのものも、演じている役者さんたちも素晴らしいのだが、私にとっては、亡くなってしまってもう二度とは会えないおばあちゃんとの再会の場でもあった。

 いろいろな事が私の人生では起こった。よく生きてきたなと思う。生き抜くことができたのは、様々な要因のお陰であろうが、その一つが祖母の存在だったのだなと今更ながらに感じた。

 大阪での上映はこの前の金曜日が最後だったようだが、半年も待てばDVD化されることだろう。今度は自宅での鑑賞を楽しみにしよう。

 

(2008年8月)