スタッフエッセイ 2008年7月

寝言

長川歩美

 カウンセリングの中で、夢を話していただくことがある。夢には、それとは気がついていないことが多いけれども、その人にとって大事なメッセージを発していることがあるからだ。大学院で初めて「夢分析」の授業を受けた時には、正直「なんか、うさんくさいなぁ・・」というイメージがぬぐえなかったが、受講を重ねるにつれ、夢は確かにその人が自分で創り出しているものなのだから、やはりその人にとって大切な意味があるのはあたりまえなのかもしれない、と考えるようになった。ちょうどその頃、夢分析を受ける機会があり、自分のみた夢を定期的に語ることで、自分のことなのに自分ではよくわからない不思議な世界を分析者に共有してもらう貴重な体験をした。一朝一夕に意味がわかるというものではないが、夢を語ることで連想が広がり、思わぬ気づきを得たり、心がとても強く動かされたり、活性化されたりした。

 夢と同様に、眠っている間にその人が生み出すものに寝言がある。寝言は夢と違って、自分で覚えていることが出来ないので、自分が寝言を言っているかどうかは、誰かに言われた時にしかわからないのが面白いな〜と思う。「こんなこと言ってたよ」と言ってもらってはじめて、夢の中の自分の台詞として、夢の記憶に結びつく場合もあったりする。私自身も、自分では全く覚えていないのに、他人から教えてもらって、恥ずかしい思いや不思議な思いをしたことがある。

 はじめて自分が寝言を言うと知ったのは、中学校の修学旅行の時。夜中に大きな声で「○○クン、大好き!」と叫んだらしい(汗)。○○クンはクラスの人気者だったけれど、決して「大好き!」だったわけではなかったのに!同室のクラスメートたちに必死で説明した甲斐なく、翌日からクラス中のうわさになってしまった。その次に指摘されたのは、高校の修学旅行だったか・・この時は、夜中に歌を歌ったらしい(笑)。寝歌?なんとも恥ずかしいながら、自分の知らない自分の言葉を人が聴いているということが、とても不思議な感じがした。

 結婚してからは、よく寝言でリアルに怒っていたらしい。その頃、なるべく夫に対してやさしくいたい、と思っていたのだけれど、しっかり寝言で聞かれてしまって、うそはつけないものだなぁとある意味感心した。それからは無理をせず、現実世界の夫に直接いいたいことを伝えるようにしている(笑)。

 先日、リビングで転寝をしていた夫がむくっと起きて、にこっと嬉しそうに、「うぐいすやろ?」と私にたずねた。「ん?うぐいす?・・うぐいすじゃないと思うけど・・うぐいすなの?」とよくわからない返しをしたら、また嬉しそうにへへんと笑って「うん、うぐいす。」とそのまま寝てしまった。何がうぐいすなのかよくわからなかったけど、なんとも可笑しかった。翌日夫にたずねてみると、私に話しかけたことはまったく覚えていないとのこと。ただ、夢の中でうぐいすの声が聞こえたような覚えがあったようだった。

 つい先日のこと、朝方、天井を向いて、私は笑って手を長いこと振っていたらしい。寝ジェスチャー?怒っていなくてよかったが・・誰に向かって、どんなシチュエーションで、どんな気持ちで手を振っていたのか知りたくなった。

 寝言にも、夢と同じようにそのときのその人にとって大事なメッセージがあるのではないかな、と思う。夢では、苦しい夢も怖い夢も、その人にとって役に立つように作用するという。寝言のエピソードとして面白い例をあげたが、たとえ苦しい寝言であっても、寝言として言葉を発することによって、夢と同じようにその人にとって何らか役に立つような作用があればいいなと思う。

(2008年7月)