スタッフエッセイ 2008年5月

非暴力と平和を願う

西 順子

 今年の年報のテーマは、「世代を超えて受け継ぐもの」。このテーマについて取り組むために課題図書を読んだり(『ザ・レイプ・オブ・南京』『沈黙という名の遺産』など)、親の歴史を聴くインタビューを行ってきた。自分自身の歴史をも振り返り、受け継いだものを内省するなかで、負の遺産が今では正の遺産となっていることに気づかせてもらった。年報執筆に向けて取り組みながら、個人レベル、マスレベルで世代を超えて受け継ぐものについて思い巡らす今日この頃であるが、そんななか、4月にたまたま二つのミュージカルを観劇した。
 一つは、劇団四季の「ウエストサイド物語」。もともとミュージカルが好きだし、特にパワフルなダンスが好きなので、楽しみにしていたのだが、観劇しおわって、感動したというのかエネルギーを感じて心と身体が震えるようだった。社会の貧困と差別、憎しみと暴力、平和を求める闘いと願い。歌やダンスを通して表現されるものには、負のエネルギーと正のエネルギーとが渦巻いていた。差別、虐待、暴力、その連鎖を断ち切ろうとして生き抜こうとした若者の姿に、現代にも通じる非暴力への願い、祈りを感じた。平和とは人を愛することであると感じた。
 もう一つは、夫に誘われて、内容は知らずにたまたま行くことになった、大阪・憲法ミュージカル2008実行委員会主催の「ロラ・マシン物語」。このミュージカルはフィリピンで従軍慰安婦にされたトマサ・サリノグさんという実在の人物をモデルにしたもので、大阪では若手弁護士らが企画し、公募で集まった市民100人が演じている。物語では、戦時性暴力による深い苦しみと悲しみ、それを生き抜き、超えて生きようとする人間の尊厳をかけた正義を求める闘いが描かれていた。主人公、そして民衆のエネルギーが渦巻く舞台、平和を求める願いに、魂が揺さぶられるようだった。感動とともに、同じ過ちを繰り返してはいけないこと、人間の尊厳を奪うことがあってはならないこと、真実と向き合うことが大切なこと・・を伝えてくださった、トマサ・サリノグさん、出演された市民の方々、このミュージカルを創った方々、企画された方々に感謝したい気持ちとなった。

 二つのミュージカルを観劇して、暴力へと向かう負のエネルギーと、非暴力と平和を求める正のエネルギーが拮抗するなかで、その渦を超える正のエネルギーを感じとった。正のエネルギーは、「生」のエネルギーでもある。負の遺産と向き合うことで、負のエネルギーを非暴力と平和を求めるエネルギーに変容させていくことができるのではないだろうか。まずは私にできるところから、一人一人の人間の「歴史」の真実と向き合っていきたいと思う。 
 7月には、ドラマセラピストの方の平和教育ワークショップとプレイバックシアターに参加する予定であるが、ここでもまたどんな体験ができるのか、とても楽しみである。

(2008年5月)