スタッフエッセイ 2007年11月

愛犬トト

津村 薫

 我が家のアイドルは動物たちだが、犬と猫(7歳♀)が1匹ずついる。
愛犬トトロ(通称:トトちゃん)はもう11歳。年が明ければ12歳になる、ロングチワワの牡。室内犬の平均寿命といわれる年齢になっているため、少しのトラブルで家族も敏感になってしまうのだが、基本的にはずっと病気知らずできた、元気な子だ。

 この子は、不思議なご縁で、生後3ケ月の時に我が家に来ている。1代目の犬はペットショップで見つめあったのがきっかけで、我が家にやってきたが、それから実に1週間という短期間で病死している。我が家に来た2日目には嘔吐と下痢を始めた犬を、「ペットショップに返品しなさい」と言った人たちがいたが、私にはそれができなかった。他の犬の感染防止のためにお店には連絡したが、「どうされますか、他の犬と交換もできますが」と聞かれ、「もう、うちの子なので返しません」と言った。昔気質の店主が「あなたがそう言ってくれたので」と、1代目の死後、少し月日をおいて2代目のトトをプレゼントしてくれたという経緯がある。

 1代目は本当に甘えんぼうで、夜鳴きまでしてくれて、手こずった分愛着もわき、あまりにあっけなく逝ってしまったため、家族でしばらくは泣き暮らした。けれど、「ぼっけ」(1代目の犬の名前。ポケットに入りそうな小さな犬だったのだ)が一生懸命生きたことで、また新たなご縁ができたのだと考え、喜んでトトを迎えることにした。この名前は、うんと長生きするようにという祈りをこめて、娘が命名したものだ。本当は「トトロ」という。

 以来11年、トトは我が家の大切な家族だ。当初はとても気のきつい子で、まだ小学生だった娘にいきなり噛みついたり(トトは、娘より自分は立場が上なのだと盛んに主張したかったようだ)、タンスにかじりついて傷だらけにしたり、そこいらの紙類をグシャグシャに破ったりと、本当にありとあらゆる困ったことをしてくれた。

 散歩をするうちに、いつしか飼い主仲間ができていったが、その人たちに、「3歳になったら落ち着くよ」「今のうちよ、大変なのは」「5〜6歳にもなると、こっちの言ってること、みんなわかるよ」と元気づけられたりして、「なんだか、子育てみたいだな」とおかしくなったことを思い出す。

 私自身は、動物がそんなに好きではない家族の元に生まれ育ったので、動物をよく知らない。「はじめて抱く赤ちゃんが我が子」という女性が増えたと言われるが、まさにそんな感じだったのではないだろうか。彼と暮らす毎日は、私が動物と知り合うことでもあった。

 娘はトトたちのおかげで、動物が大好きになり、知らない人であろうと動物連れの人に屈託なく近寄っていき、「何歳ですか?」「お名前、なんて言うんですか?」などと言うようになっていった。多感な時期をトトと過ごし、はたと気がつけば、ふたりが同じ格好で寄り添って寝ていることもあったりした。きょうだい同士で遊んでいる光景に心がなごむという親がいるが、そんな体験に近いものがあったのかもしれない。面白いのは、動物に関心がなかったはずの私の実家の親も、トトを可愛がり、トトと会うと喜ぶのだ(笑)。

 夫が単身赴任だったとき、娘が入院したとき、我が家の一大事を共にしてきた仲間でもあるトト。飼い主仲間の言葉通り、今は私たちの言葉の大半を理解していると思う。面白いのが、私がスーツを着ると、「あ、外に行くんだな」と諦めるのか、まつわりつかないことだ。一方、ジーンズなど普段着スタイルだと、相手をしてもらえると予測するのか、出かけようとすると、納得がいかないという顔をする。排泄も部屋ではしない。そのときは私たちを見て、「キュン」と小さく吠えて教えてくれるのだ。

 芸などはまるで仕込んでいないので、どの程度賢いのかはわからないのだが、リコーダーを吹くと、勝手に歌い出したのには驚かされたことがある。また、「寝ようか」という言葉には強く反応し、家族の誰よりも先にベッドに飛び乗る、可愛いところがある(笑)。食い意地が張っているので、食べ物でつられて、失敗するタイプかもしれないなあ〜(笑)。たとえば、盲導犬になるような賢い犬には到底及びもつかないと思うけれど、とにかく人なつっこく、人が大好き、食べることが大好きという健康優良児だ (笑)。お互いにコミュニケーションがとれる程度には、理解し合えてもいる。いろんな表情や仕草で私たちに何かを訴えてくるのが、可愛くてたまらない。

 月日は流れ、彼が我が家の家族の一員になってから、はや12年を迎えようとしている。動物たちの寿命は短い。その日がそんなに遠くはないことを私たちも (きっと彼も?)知っているが、でも、だからこそ1日1日が大事だ。出会えたことを感謝して、共にいられる月日を楽しんでいくことにエネルギーを注ごうと思う。

 トトちゃん、これからもよろしくね。君が長く元気でいてくれて、我が家での生活を楽しんでくれますように。

(2007年11月)