スタッフエッセイ 2007年7月

息子の背中

下地久美子

 今年のFLCの年報のテーマが、「ワーク・ライフ・バランス」ということで、最近、仕事と家庭の両立について考えることが多い。先日、参考文献の「セカンド・シフト」(アーリー・ホックシールド著)という本を読んだ。日本の男性の家事参加率は、きわめて低いが、それはアメリカでも同じらしい。女性ばかりが、昼間は自分の仕事をして、帰宅後は、セカンド・シフト(家事という仕事)をこなし、疲弊しきっている現状と女性たちのため息が、行間から溢れ、「どこも悩みは同じなんだ」と、共感しきりだった。

 さて、我が家に目を向けると、恐ろしく家事に非協力な夫がいる。月に一度の風呂掃除とゴミ出し以外は、やれば損をするかのように、全く手をつけようとしない。何度か家事の分担について話し合ったが、2日と続かないので、こちらもだんだんと言わなくなり、諦めムードが漂っていた。
私が、朝6時に起きて、弁当を作って、朝食の用意をして、洗い物をして、洗濯している間、夫は、なんと朝から2時間も、お風呂に入っている。この不公平を是正するために、「あのさ、カバやないねんから、朝から2時間も風呂に浸かっているヒマがあったら、自分が食べたあとの食器ぐらい洗ってよね!!」と皮肉を込めて言ってやった。するとどうだろう。流しに山積みになった食器のうち、器用にも自分の使った分の食器だけが洗われてあったので、目が点になった。(たぶん、本人に悪気はないのだが・・・)。

 男性の家事参加率を上げるためには、子ども時代から習慣づけておかないとダメなのよね。と思いたち、中3の息子に、「今日からお手伝いをポイント制にしようと思うねん。シールが100個溜まったら、1000円のボーナスあげるけど、やる?」というと、意外にも、「やるやる!」というので、お手伝いポイントシステムがはじまった。これまで、頼めばやってくれるけれど、進んでお手伝いをするタイプではなかった息子だが、ポイント制にしてからは、張り切ってやってくれる。ポイント表に嬉しそうにシールを貼っている彼の様子を見て、ワックスで髪の毛をピンピンにして格好をつけていてもまだまだ子どもだなぁ〜。確かに、大人になっても、スーパーやドラッグストアのポイントを溜めるのって、楽しいもんなぁ〜と、作戦成功をしめしめと思っていた。

 はじめは、どうせ3日坊主だろうと高をくくっていたが、予想に反して、息子のお手伝いは続いた。布団の上げ下ろしから、食器洗い、風呂の湯張り、洗濯物たたみと、こちらが言わなくてもやってくれるので、大助かり。時には、「ごめん、今日は無理・・・」と言うことはあっても、ポイント表がシールで埋められていった。ポイントシステムがこんなに効果があるなんて、我ながら良いことを思いついたとホクホクしていた。これは、ぜひ夫にも家事分担表を作ってみるのもいいかもしれないなぁ〜と思っていた。

 ある日、いつものように夕食の後片付けをしている息子に、「ありがとう。めちゃ助かるわ。ポイントどんどん溜まるなぁ」と声をかけると、「オレな、別にポイント溜めるためにお手伝いしてるんとちがうねんでぇ〜。お母さんがいつも大変そうやから、手伝ってあげようと思ってんで」「へぇ?そうなん・・・」「な〜んて、ウソやで。ポイントポイント。そんないい子やったら、気持ち悪いやん」と本音を聞いて、また、びっくりした。

 いつまでも子どもっぽいと思っていた息子が、子どものふりをして手伝ってくれていたことを知り、ちょっとジ〜ンとしてしまった。結局のところ、家事を手伝うとか手伝わないということは、気持ちの問題なのだろう。

 家事をする息子の背中を見て、うちのオヤジも、「いっちょ家事でもやったろか」と、目覚めてくれないかと思うのだが、根っからのノー天気だからなぁ〜。我が家の家事分担をめぐる攻防は、まだまだ続きそうだ・・・。

(2007年7月)