スタッフエッセイ 2007年6月

教え子

前村よう子

 高校非常勤講師を始めて、今年で13年目になる。大学を出てストレートに教員になっている人なら、35歳で、仕事も軌道に乗り、気力も体力もまだまだある頃だろう。だが、私は30歳で教員免許を取得し、非常勤勤務を始めた訳だから、43歳。仕事のおもしろさは分かってきたが、気力で保っている部分もあるくらい体力の衰えは感じている。忙しい合間をくぐってスポーツジムでトレーニングをし、学校での移動は階段、授業内では板書を繰り返し、大声を張り上げ続けている為、40代にしては体力がある方だが、20〜30代の同僚と比べると、その衰えは否めない。ジムに通えない日が続くと、簡単に筋力が落ち、久々に筋トレに励んだ後の筋肉痛が二日後に来る。更年期の症状の一つであるホットフラッシュも体験済みだ。身体は確実に年を重ねて弱る方向へ向かっている。
 この春、前々任校で教え子だった元生徒(Aさん・女性)と、現任校で同僚となった。私立校では卒業生が母校で非常勤講師や常勤講師となるケースは少なくないので、このパターンで教え子が同僚になった体験は持っていたが、別の学校に勤務するようになったのに、以前の学校の教え子と同僚になるというのは、稀なケースといえる。周りの教員からは、「へー、そんな偶然ってあるんやねぇ。縁があったんやねぇ」と珍しがられた。
 さて、その同僚となったAさん。他校での非常勤期間も入れれば教員歴は3年目。教科指導は当然ながら、校務分掌や生徒指導などにおいても、前向きで熱心で、生徒との関係もよく、同期や先輩教員の評価も高いようで、なんだか私は嬉しくなっている。我が子でもないし、前々任校では現代社会を高校3年の時に週に2回教えただけの縁なのに、彼女のことを誇らしく思っている私がいる。彼女が褒められると、まるで自分を褒めて貰ったかのように感じる。
 先月、お互いに忙しい中を調整し夕食を共にしたのだが、私がAさんたちの授業中に教科内容を少し離れて実施した女性心理の授業(当研究所所長の村本邦子と、パートナーである村本詔司氏による共訳の本『女はみんな女神』を用いた授業)のことや、授業中に語ったあれこれを覚えていて、それを肯定的にとらえてもらっていることを知った。個人的にいろいろしんどいことが重なっていた頃でもあったので、Aさんに肯定的なメッセージを貰ったことは、私にとって嬉しく、また励みにもなった。
 年齢なりの衰えがあり、しんどさが加わる分、無駄に重ねてきたわけではないこの年月の深みを感じることができたAさんとの再会。これって頑張ってきたご褒美かなと思うこの頃である。

(2007年6月)