スタッフエッセイ 2007年2月

学校給食

安田裕子

 最近、学校給食をいただく機会に恵まれることがある。小学校を卒業してしまった私たちには、小学校の先生にでもならないかぎり、もはやなかなか食べることのできない学校給食。「美味しかったよね〜」、「好きだった♪」、「給食の時に流れていた音楽が楽しかった」、「あれ、嫌いやったわー」、「でも、懐かしいね」などという言葉を皮切りに、口々に様々な思い出が語りだされそうである。少なくとも私にとって、学校給食には、たくさんの思い出が詰まっている。

 私は、給食が大好きな小学生だった。当時、「今日の献立は何かなぁ」、「あさっての小おかずはフライドチキン!」「チーズのデザートだってぇ」と、楽しみながら献立表をチェックするのを日課としていた。「牛乳が生ぬる〜い」、「酢豚になんでパイナップルが入ってんねん!」などというツッコミをいれながらも、毎日、給食の時間はとても楽しみだった。黒糖パンやチーズパンなど、バラエティに富んだパン食。そして、白米などは家でいつでも食べることができるのに、なぜか『米飯の献立』にワクワクしたり。とりわけ、小さいおかずと大きいおかずという2種類のおかずが一番の楽しみ。特に美味しくて印象に残っているおかずは、『クジラのノルウェー風』。2センチ弱の角切りにしたクジラを揚げて甘辛く味付けした小おかずは最高だった。が、捕鯨が禁止されて以降、『マグロのノルウェー風』へと様変わり。学年が数年下の子どもたちは、『クジラのノルウェー風』の存在すら知らない。そうか、あんなに美味しいもの、食べていないのね。それだけに、忘れられない貴重な一品となっているのかもしない。

 給食を食べながらのクラスメイトとの色んなやりとりも、楽しかった。当時、『◇○(芸能人の名前)の料理天国』というテレビ番組があった。番組と番組の合間に流れる3分程度のごく短いコマーシャル的な番組で、各地の郷土料理を食し、「うまいっ!」などといいつつ紹介する番組である。クラスのある男の子は、カレーの献立の時に、『◎△(男の子の名前)の料理地獄(・・)〜!!』といってみんなの注目を集め、カレーの入った器に牛乳を入れてグルグルにかき混ぜ、にっこり笑って、「うまい〜っ!!」と大声でひとこと。途端に、クラス中が笑いの渦に。食べ物をそんなふうにゴチャ混ぜにするものではないとか、行儀が悪いからやめなさいという関わりもひとつだったかもしれない。しかし、そこにいた先生は、「うぇ〜っ!!」とか「でも結構いけるなぁ」とかいいながら、一緒に楽しんでくれた。成長期にある子どもたちの食生活の一旦を担い、また、友達や先生とワイワイいい合いながら食べることの楽しさを経験しえた学校給食。キラキラとした思い出である。

 月曜日から金曜日まで、6年間、毎日給食を楽しみにしていたあの頃のこと。そして、そうした給食にまつわる様々な経験が、今確実に、私の血となり肉となっている。淡々と繰り返される食生活が、蓄積され、身体・精神の両面において、人をかたちづくっていく。心身共に育ち盛りである子どもたち。なかには、社会のなかで、また個々の家庭環境のもとで、様々に大変なことがあったりするのかもしれない。栄養価の高いものを友達や先生と一緒に食べる、給食という毎日のなにげない経験が、子どもたちの心身に染みわたるものとなってほしいなと、ふと思った。

(2007年2月)