スタッフエッセイ 2007年2月

働くということ

下地久美子

 中学2年生の息子が、学校の職場体験に行ってきた。以前から「高校生になったら、コンビニでバイトするねん」と言っていたので、職場体験では、近くのスーパーで働くことが決まった。彼の仕事は、野菜売場担当で、1日中きゅうりや大根をラップで包んだり、野菜を棚に並べたりしていたそうだ。この職場体験は、親の私が、息子以上にソワソワしていて、こっそり柱の陰からの見ていたい誘惑に駆られたが、「絶対に見にくんなよ!」と釘を刺されたので、報告を楽しみにすることにした。仕事の感想を聞くと、「疲れた・・・」と、ひとこと。1日中の立ち仕事と緊張で、よほど疲れたのだろう。お風呂にも入らず、夜8時前から寝てしまった。無事に3日間が終わって、スーパーの人からは「高校生になったらアルバイトにおいでな」と誘われたらしいが、「スーパーは、しんどいから、もういいわ。学校行ってる方がラクや」とこぼしていた。まあ、3日働いただけでは、仕事の楽しさを感じるまでにはいかないのだろう。働くことの大変さがわかっただけでも、収穫というところかな。

 私が、はじめてアルバイトをしたのは、大学1年生のとき。近所のファンシーショップ(今は、そんな呼び名はないのかな?)だった。いわゆるちょっと可愛い小物も売っている文房具屋さんだ。当時、サンリオのキティちゃんとかキキとララが全盛期で、店もそれなりに流行っていて、忙しくも楽しい日々だった。まず、レジを打つというのが面白いし、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という挨拶も新鮮だし、おまけに給料までもらえてしまうというのは嬉しかった。このアルバイトの最初の難関は、ラッピング。もともと不器用な私は、なかなか上手に包むことができずに、苦労した。家で、新聞紙を使って特訓し、どうにか格好がつくようになってからは、いかに美しく早く仕事をこなすかに夢中になった。おかげで今も、プレゼントのラッピングには、自信がある。昔からそそっかしい性格なので、商品を落として割ってしまったり、失敗もたくさんして、へこむことも度々あったが、それでも働くことの楽しさを最初に教えられた出発点は、この小さなお店だったなと思う。
 
 アルバイトは、それほど責任を問われないため、振り返れば楽しいことばかりだった。が、実際に就職してからは、世の中そんなに甘くないということを、思い知らされた。頑張れば頑張るだけ認められるわけでもなく、自分の無能さを突きつけられて、落ち込むことも数えきれないほどあった。でも、ここまでやってこれたのは、打たれ強いというのもあるが、ただ単純に働くことが好きだからかなと思う。
 自分にとって働くことってなんだろうということを、最近よく考える。簡単に答えは見つからないが、楽しく働くためのポイントは、とにかく小さな達成感の積み重ねと失敗をいつまでも悔やまないこと。この二つだと思う。ぜんぜん楽しくないけど、お金のために我慢しているというのは、つらいだろうし、体に悪い。どんな仕事にも、小さな喜びはあるのではないだろうか。例えば、ブティックでは、自分が勧めた商品をお客さんに買ってもらえて嬉しいとか。別に誰かに褒められなくてもいい。生きがいとか自己実現とかを求めすぎず、日々頑張っている自分を、少しでも肯定することができたら、それでいいのではないかと、思っている。

 

(2007年2月)