スタッフエッセイ 2007年1月

呼吸する街

渡邉佳代

私は沖縄が大好きだ。先の年末にも那覇→津堅島→コザ→那覇と巡ったばかりだ。10年前に来沖してから、どういうわけか私は沖縄に魅せられ続け、また戻る日を待ちわびている。その土地を歩き、その土地のものを食べ、その土地の人たちと島酒を酌み交わしながら語らう。そこに集う人々はゆったりとリラックスし、ほんのひと時だが旅人である私も交えてもらい、その出会いを味わう。沖縄独自の文化・歴史だけでなく、そこにいる人たちの感性や生きる力、自分の住む土地を大切にする気持ちにも私は惹きつけられる。

今回の旅では、バスで一緒になった高校生の女の子に、道に迷って御嶽や激戦地に踏み入ったことを話すと「それダメですよ。私ら、おばぁやおじぃ、学校でも、色んなときに土地のことや戦争のことを聞かされています」と聞いた。ここであったこと、してはいけないこと、大切にしていることをちゃんとつながりのなかから受け継がれているコミュニティは、今や稀少ではないだろうか。沖縄に来るたびに、こうしたことにふと気づかされる。

年報14号の沖縄戦の取材では、沖縄の琉球時代から戦後の流れを知る機会に恵まれ、それまで被害の側面としてだけ捉えてきた沖縄観が、私のなかで大きく崩れ去るのを感じた。琉球時代から幾たびも従属下に置かれ、破壊され、占領され、文化的にも抑圧されてきたという過酷な歴史の流れに翻弄されながらも、さりとて受身に流されるのではなく、その時々に選択し、力強く生き抜く沖縄の人たちの姿を感じたのだ。

沖縄の人たちと話していると、沖縄戦のことや大和人への思いを聞かせていただく機会があるが、そうした話を聞きながら、私自身も自分の輪郭が明確になる。現在の基地問題一つをとって見ても沖縄内で意見が異なるが、なぜそれを選択するかと問うたとき、物事の善悪からの観点ではなく、どのように生きるのか?ということが大きくクローズアップされるように感じるからだ。

今回、コザ(沖縄市)とコザンチュ(コザに住む人)に出会えたことは、私の沖縄旅のなかで最高に印象的だった。コザは戦後の米軍基地とともに栄え、オキナワン・ロックの最大拠点地としても知られているが、ベトナム戦争時代と比べると寂しくなっているよ、と辿りつくまでに色々な人に言われた。しかし実際に行ってみると、雑然とした商店街には確かに空き店舗が目につくのだが、40カ国からの多様な人種、コザ以外からの移住者、 元々のコザンチュ・・・と国も世代も越えてすごいパワーで、人の熱気があふれる生きた街だった。まさにディープでロックな街だ。そして、あるカフェバーでコザ暴動の話を当時参加した人から聞かせていただくという貴重な機会に恵まれた。

コザ暴動は復帰前の1970年、米軍支配や軍人・軍属による事件・事故に住民たちが反発し、外国人車両80台余を放火するという事件である。話を聞くなかで興味深かったのは、「住民は完全に暴徒化したわけではなく、死者もでなかった珍しい暴動」ということ。多くの外国人が訪れる歓楽街のパークアベニューに住民たちが侵入しようとすると、パークアベニューの住民たちが「私たちはこれで生活しているんだ」と通りを封鎖し、子どもたちもそのためにブロック塀を運んだという。するとそれ以上の侵入はなかったそうだ。同じことが、基地内で働くコザの人たちやホテルで働く人たちとの間でもあったという。

その話を聞き、コザの「チャンプルー文化」の根源を垣間見たような気がした。街の人たちやライヴハウスで聴いた音楽からも感じたが、コザは様々な文化をしなやかに、したたかに取り込みながらも、個性的で想像力や表現力、ユーモア、そして反骨精神がある。ある人から「コザは開発が進む都心のような本土化はないし、基地があってもアメリカ一色でもなく、独特な街。その意味も込めて、自分たちをコザンチュと言う」とも聞いた。自分たちの住む街が好きで、守りたくて、でも頑なではなく受け入れる度量もあり、しなやかに誇りを持って生きているコザンチュ。

コザは呼吸する街だ。街や人の雰囲気から、びんびんと力強い鼓動が伝わってくる。街と人が互いに強い意志と個性を持ち、それらが合わさって大きなうねりとなり、力強く呼吸しているように感じられたのだ。過酷な時代の逆境を幾度となく経験するなか、そのたびに選択を迫られ、培われてきた街と人が持つ主体性だろうか。弾力性というか、しなやかさというか。これこそレジリエンスではないだろうか。主体性を持った呼吸する街って、とっても魅力的だ。こうした街に少しでも滞在すると、否が応でも自分というものを強く意識する。

ある移住者が、「コザは下町感覚で人付き合いは濃いけど、結構クールなところもある。違って当たり前の街だから呼吸しやすい」と話してくださったが、街の持つ力、人の持つ力がうまく噛みあって協同しているのもあるんだろうな、とふと思う。まぁ、一観光客の視点なので、乱暴すぎる表現かもしれないが、せっかくなので、この感動を書き記しておこう。

ディープでロックな街、コザ。のんびりできる八重山も大好きだが、コザにはきっとまた近いうちに行くだろう。いつかロックフェスにも行きたいな。今年オープンするミュージックタウンも楽しみだ。沖縄旅はまだまだ終わらず。

 

(2007年1月)