スタッフエッセイ 2006年11月

晩秋の収穫、熟成の実り、渋柿

安田裕子

今、我が家の庭の物干し竿には、柿がいっぱいつるしてある。皮をむき、ビニール紐でくくりつけた10個の渋柿。それが54本。いわば、オレンジ色の暖簾(のれん)のようである。ずらりと並んでぶらさがっているその光景は、壮観ですらある。毎年この時期になると、物干し竿は、つるし柿でいっぱいになる。

市内に住んでいる伯母が、都会の喧噪を離れた田舎に、ちょっとした畑をもっている。伯母夫婦、そして姪にあたる姉。年に2回、3人で畑に行き、限られてはいるが諸々の農作物を収穫してくる。

数十年前、伯母夫婦ちょうど畑の収穫を始めた頃。いとこ(伯母の子ども達)は遠くの土地で働いていたり、車の免許をもっていなかったりで、畑仕事を手伝う都合がつかなかった。伯母夫婦も、車を運転することができない。畑があるのは、足がなければ行くのが難しい田舎の土地。そこで姉に、ヘルプのお声がかかった。それから十数年来、姉は休みをとり、年2回、伯母夫婦の畑仕事の手伝いをする。早朝、車で家をでて、伯母夫婦を迎えに行き、3人で畑へ向かう。年2回のちょっとしたイベント、収穫祭。

そのイベント性を高めてくれるのが、数種類の農作物たち。姉は、畑仕事をしたご褒美に、おすそわけをもらって帰ってくる。白菜、かぼちゃ、そして渋柿。なかでも、渋柿は、量が半端でない。とりわけ今年は豊作だった。

姉が持ち帰った後、夜遅くから、渋柿を加工する作業が始まる。せっせと皮をむき、10個ずつ紐にくくりつけるという作業。干し柿にするのだ。父と母は一生懸命。途中、「まだまだあるな(苦笑)」、「だいぶむけたね(嬉笑)」などといいながら、2人ならんでせっせと干し柿作り。父が皮をむいたものを、母が紐にくくりつける。「大変だ〜」とかいいつつも、なんだか楽しそうである。10個の渋柿を、等間隔にくくりつけ、これまた等間隔に、物干し竿につるしていく。54本のつるし柿、合計540個。ずらりと並んだつるし柿が、今、うちの庭を見事に飾っている。

渋柿は、干している間に、内側に甘みをたっぷり蓄えていく。そして、もぎたてを食べるには渋すぎた沢山の渋柿たちは、ある期間の熟成を経て、甘く美味しい干し柿になる。その甘さをたっぷり内に含んだ干し柿たちを、ご近所さんにおすそわけ。ご近所さんに振る舞い、自分たちも味わう。父母の、秋の楽しみのひとつでもある。晩秋にさしかった今日この頃。熟成という実りもまた素敵だな。
 
(2006年11月)