スタッフエッセイ 2006年11月

本物か、偽物か。

下地久美子

 高校時代の友人が、豊胸手術をした。彼女によると、出産後、胸がどんどん萎んでしまい、それがずっとコンプレックスになっていて、何年も悩んだ末、ついに決心したそうだ。手術後、Aカップだった胸は、Eカップになって、本人としては大満足という。友人に、新しい胸を触らせてもらったが、近年の美容整形の技術は素晴らしく、程よくハリと弾力があって、作り物とは思えない出来ばえだった。
 
ここ最近、美容整形は、かなり一般的になってきていてはいるが、それでも、「自分の体にメスを入れるとは何たること」という意見も根強い。友だちの豊胸手術についても、仲間のうちでは、賛否両論だった。胸が大きくなって羨ましいという人もあれば、40過ぎて、豊胸する必要なんてないんじゃないの、とか。乳癌リスクが上がるのに・・・とか。整形外科医をしている知人は、美容整形は危険なので、家族には絶対にやらせないという話をしていた。
 巷でも、いつまでも美しくありたいという思いは、年々強まっているような気がする。高価なアンチエイジング商品が、飛ぶように売れているし、手っ取り早く「フェイスリフトしちゃえ」という人も、珍しくない。お世辞でも「いつまでも若いですね」と言われると気分がいいし、反対に「ちょっと老けた?」なんて言われた日には、ショックで夜も眠れない。
 中年期以降というのは、喪失との戦いだ。シミ、シワ、白髪・・・。当たり前ではあるが、10年前の写真と現在の顔を見比べると、老けたよなぁ〜と、愕然とする。シミもシワも成熟のしるしとして、受け入れられるといいが、このシミがなければなぁ〜とコンシーラーで隠したり、無理やりシワを伸ばしてみたりと、悪あがき。なかなかあるがままの自分を受容するというのは、難しい。
 医療技術が進歩して、シミもシワも簡単に消すことができ、胸も好きな形にでき、鼻は高く、目も大きくが、容易になった。ずっと劣等感にさいなまれてきた人が、美容整形によって、希望をかなえられるとしたら、それはひとつの解決策だと思う。でも、なんとなく違和感で胸の奥がザワザワする。コンプレックスを消しゴムで消すように、簡単に取り去ってしまっていいのかな。魔法はいつか解けてしまう。消したはずのシミもシワも、そのうちまた増える。大きくした胸や目は、病気への不安につながる。それならば、今ある自分でいいと思えるほうが、精神的にもずっといい。
 誕生日が来るのが嬉しかったのは20歳までで、それ以降は、誕生日が来なければいいのにと思っていた。でも、そろそろ大人の女性として、カッコよく年を重ねていければいいなと思う。素敵に年齢を重ねている大人の女性というのは、まだ少数派だが、たまに笑いジワが、チャーミングな女性に出会うと、ハッとする。その人の生き方が顔に出るというけれど、自信をもって生きている人の顔は、魅力的だ。やっぱり、そういう人は本物だなと思う。
 内面を磨くというのは、よく使われるフレーズだけど、実行するとなると、どこから手をつければいいのだろう。ひとつには、周りの人に感謝すること。良い仲間に巡り会えて、仕事ができることもそうだし、家族の支えもありがたい。それから、感動すること。音楽を聴いたり、映画を観たり、美味しいものを食べたり、綺麗な景色をたくさん見るのもいいかも。とにかく、好きなことや楽しいことをたくさんやっていくことにしよう。そして、10年後、20年後に、年を取るのも悪くないと思えるようになっていればいいな。
 
(2006年11月)