スタッフエッセイ 2006年6月

おやしらず

安田裕子

 おやしらずを4本、大事にもっている。というか、抜くのが怖くて、そのままにしているというのが正直なところ(笑)。いつだったか生え始めの頃、痛みは感じなかったものの、ほっぺたの内側にあたる違和感がなんだかとっても気になった。歯医者さんに行って抜いてもらったほうがいいのかなぁ。抜いた経験のある人に尋ねてみると、「グリグリ抜くので、バキバキいうのが聞こえるよ〜」。えっ、ホ、ホントに?・・・(沈黙)。とくに痛みはなかったので、ま、いっか、と勝手に判断して、そのままにしておいた。その後、なにかの折に、「おやしらずは老後のためにとっておいたらいいらしいよ。むやみに抜くのはよくないみたい」という情報をゲット。あ、そう?それならそう思っておこ〜っと♪ ということで、放置期間はさらにのびた。

 それが最近、左奥下のおやしらずが痛みだした。正確には、その周辺部分の歯茎が、である。とりあえず落ち着いていたおやしらずが、また成長し出したのだろうか。その勢いに押しやられて、歯茎が腫れているようだった。そのうち治るだろうと願いを込めつつ高を括(くく)っていたが、痛みは日増しに強くなっていく。とりあえず、歯科医に予約したものの、診てもらうまでの数日間がまあ大変。歯磨きすれば痛みは絶頂。3度の食事もままならない。やわらかくて高タンパクのお豆腐が、なによりもご馳走に思えた。

 それでも頑張って友達とご飯を食べに行った。ただし、選ぶ基準は「どの食べ物がやわらかいか」。中華料理屋さんに行った時は、お店に入る前から中華粥にしようと固く心に決めていた。それなのに、お粥がない。う〜、大ショック…。あのときほど、お粥が恋しく思えたときはなかったな。唐揚げ、海老チリ、酢豚、八宝菜、豚の天ぷら、春巻き、肉団子etc…。いつもなら、美味しそう!どれにしようかな〜♪と、目をランランと輝かせながらさんざん迷うのだが、今回ばかりは「どれなら食べれるか」というシビアな基準。やわらかいもの…、やわらかいもの…。ということで、麻婆豆腐とかに玉を、即選択。う〜ん、いける。我ながら、やわらかくて美味しいベストセレクション。

 その後、歯医者さんで応急処置をしてもらい、とりあえず炎症はおさまった。やっと美味しくご飯が食べられるようになった〜!と、ホッとひと安心。それにしても、今回のことで改めて、歯って大切だなとしみじみ思った。カルシウムをとって、ちゃんとケアして、大切にしないとね。おばあちゃんになったとき、自分の歯でしっかり食べれるようにしたいもんね。

 さて、問題のおやしらず、歯医者さんいわく、「抜いた方がいいよ」とのこと。歯を余分にいじらない歯医者さんなので、その言葉がグッと響く。「またいつか痛くなる可能性があるよ」、と。あぁ、やっぱりそうなんだ…。でもまあ、とりあえず痛みはなくなったわけだし、むやみに抜くものではないという人もいるわけだし、とゴチャゴチャ言い訳をしつつ、また先のばしにしようとしている私。「おやしらず抜いたら顔が腫れるで〜」「抜いた後、2,3日痛くなる人もいるみたいよ」という恐ろしいこともチラホラ聞くわけだし、ゆっくりと時間のとれそうなときに診てもらうとするかな。もしかして他の病院では、「このおやしらずは抜かない方がいいよ」と言ってもらえるかもしれないしね。痛い思いをしたのに、まだこんなこと言っている私って…。

(2006年6月)