スタッフエッセイ 2006年3月

白いもこもこの・・・

森崎和代

 私は仕事柄、電車での移動が多く、また乗り継ぎも多い。そこで、日頃の運動不足の解消と時間の有効活用のため、駅の階段を走って登り降りし、通路も走るか、たったか早足で歩くことにしている。

 先日仕事の帰り、乗り継ぎ駅で、もうちょっとというところで電車に乗り遅れた。いつものように階段を駆け上がり、通路を走り、また階段を駆け降りたというのに乗れなかったのだ。これがまた、なぜか勝負に負けたように悔しい。くっそ〜と思いながら時刻表を見ると、次の急行まで時間がある。この時は、気がつくと悔しさより空腹が勝っていた。お昼の12時も回っていたし、急行待ちの間、ホームで昼食をとることにした。なんと呼ぶのだろう?最近増えてきたスターバックスのようなアメリカンスタイルのコーヒーショップ(やっぱり、おばさんだな・・・)。この駅では、ホームにあるので、こんな時も気軽に入れてありがたい。乗り遅れたのも良かったかもと、直ぐ気を取り直すプラス思考の私。

 迷わず店内に入って、注文を済ませカウンターに座り、おいしいホットサンドウィッチとコーヒーをいただく。しばらくすると、手編み風の水色の帽子がかわいらしい、しかし、あまり身なりが良いとはいえない1人の年配の女性が店に入ってきた。若い男性の店員さんが「いらっしゃいませ。ご注文は?」と聞く。するとおばあさんは小さな声で「白いもこもこの・・・」。店員さんは上手く聞き取れず腰を少しかがめて、「は?」と聞き返す。おばあさんは「白いもこもこの・・・」と再度注文している。おばあさんは、ホイップクリームの乗っているコーヒーを注文しているようなのだ。しかし店員さんは理解ができず、少し困り顔で、「は?白い???・・・・・、あ〜、ホイップクリームの!」とやっと理解ができたようだった。そばで聞いていたわたしは、「そうそう」と、ちょっとホッとする。

 手編み風水色帽子のおばあさんは、外の看板にある、何やら美味しそうな「白いもこもこ」の写真を見て店に入ってこられたのだろう。店員さんは、「白いもこもこ」の意味が分かると、やはりとても丁寧に、コーヒーやトッピングなどいろいろな種類があるので説明を始めた。わたしは内心、『多分、親切だけどそのややこしい説明は要らないぞ』と思っていたが、案の定、そのおばあさんは即座に笑顔でこう言った。「一番安いヤツ・・・」(笑)。でも、ここからがいいのだ。その店員さんは、さらに穏やかで優しい口調で、「では、このコーヒーに白いもこもこを載せると○○○円になります」と。いいなぁ〜。

 今風のカッコイイ若い男性の店員さんが、おばあさんの「白いもこもこ」という言葉を使って、優しくやりとりしている様子を見て、お昼下がりの陽だまりにいるように心がほんわかした。急行電車がホームに入る頃、サンドウィッチとコーヒーと、ふんわり優しい気持ちで、お腹も心もいっぱいになっていた。

(2006年3月)