スタッフエッセイ 2005年10月

地に足つけて・・・

村本邦子

 例年、秋は猛烈に忙しいが、忙しさは年々、加速し、この頃では、毎年、「今年の秋が人生でもっとも忙しい」と思っている。今年も、8月末から嵐の中を駆けめぐっているような感覚だが、どうにも、地に足がつかない。「忙しくて目が回る」という表現があるが、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりで、本当に目が回る感じ。身体感覚を入れた表現を持つ文化の中では、比喩的な表現から実際の身体症状が発生しやすいとどこかで読んだことがある。悩みすぎて「頭が痛い」と言う人は、実際に頭痛に見舞われる確率が高くなるという。因果関係ではなく相関関係ではないかと私は疑いを持っているが、とりあえず、「忙しくて目が回る」と言うのはやめておこう。

 最近の状態についてよくよく考えてみると、めまいというより、むしろ、足下がおぼつかない感覚に近い。大袈裟に言えば、フワフワ雲の上を歩いている感じ。長らく引き籠もっていた映画「ホーム」のお兄さんが、初めて外へ出たとき、地面から10cmくらい上を歩いている感じがしたと表現していた。10cmとは言わないが、1cmくらい上を浮遊している感じがする。一種の職業病で、「この感覚はどういう精神症状だろう?」と考えてみたが、おそらくは、一種の離人症状なのだと思い至る。

 外国へ行って馴染めないとき、このような感覚に襲われることがある。周囲で交わされる言葉がわからず、食事も合わず、時差のせいか現地の時間体系に馴染めず、ぐっすり眠れないというようなとき。この夏、バリに10日ほど滞在したが、この旅行では、最初から地に足をつけることができて自分でも驚いた。食べ慣れたご飯や焼きソバに、おそらくは人の手をほとんど加えずに収穫されているであろう大地の恵みのようなふんだんな野菜、食べ物がおいしく(海外に出て、日本食が恋しくならなかったのは、今回が初めてだった)、また、時差がほとんどなく、現地の時間体系に容易に入ることができたためだろう。日本語を話す相手がいたこと、英語でコミュニケーションが図れること(互いに拙い英語を話すため、英語を母国語にする人たちより、しっかり向き合ってコミュニケーションがとれる感じ)も重要なポイントだったかも。知らないはずのインドネシア語でさえ、なぜかわかるような気すらした。

 というわけで、この秋を無事に乗り切るためには、食べること、寝ること、生活のリズムを世間に合わせること、時間を惜しまず人と話すこと、を心懸けてみよう。また、大地に根ざしたイメージを持つことも有効かも。年々、忙しい最中のスケジュール管理やストレスマネジメントがうまくなっていくが、今年は、地に足つける工夫に挑戦してみよう。とりあえず3ヶ月。その後はしばらく休養を取ることも忘れてはいけない。最近、ストマネの研修に出かけることが多いが、自分が実践してればしてるほど説得力あるかもね。

(2005年10月)