スタッフエッセイ 2004年11月

2人に1人の男が・・・

くぼたようこ

何だと思います?
買春した経験があるのだそうです。

 この調査を見つけたとき、目の玉が飛び出るほどびっくりした。いや、そんなことも知らなかった無知を恥じるべきなのか。思わず知っている男の顔を思い浮かべて、二人に一人か・・・と思ってしまった。
 「買春意識調査」(1997)によると、男性の46.2%が買春経験があると答え、買春経験を持つ人のうち、始めての買春経験年齢が10代の人が36.8%にのぼる。「あなたの周辺の知人男性にどれくらいが買春体験を持っていると思いますか?」との質問には、およそ半数の男性が70%以上だと思っており、自分が買春経験のある人ほど、周りにも体験者が多いと思いこんでいるという結果だったそうである。
 まさかねと思いつつも、夫に聞いてみた。「買春したことある?」「ないよ。」ついでに聞いてみた。「男の何%が買春したことがあると思う?」「さあ、半分ぐらい?」ご名答。「自分が体験している人ほど、実際より周りが体験していると思っているらしいから、70%ぐらいとか言われへんでほっとしたわー」なんて会話をした。

 今月1日に発行した女性ライフサイクル研究14号では、「戦争とトラウマ」を特集し、私は「戦時・性暴力」をテーマとして原稿を書いた。太平洋戦争時の、日本人による凄まじい性暴力、強姦がなぜ引き起こされたのかについても、いろいろと調べ、自分なりに考えた。主な理由としては、以下のようなことが考えられた。

・軍隊で、上官からの暴力を受け、その捌け口として性暴力が行われた。
・軍事教育により、意識が鈍感になり、感情が麻痺し、相手への共感性が失われていくために、性暴力などの残虐行為の実行が容易になった。
・敵への侵略や暴力的行動が賞賛される中で、集団心理により個人の良心が抑えられ、性暴力などを通して、敵への残虐行為を実行することが良いことのような心理状態が生まれた。
・戦時性暴力が犯罪であるという認識の薄さから、性暴力が行われても処罰されないことが多いため、性暴力が抑制されなかった。
・アジア人への差別意識があった。

 それでも、それだけでは説明され得ない疑問が残った。嫌がる相手に無理やりする性暴力は、いったい楽しかったのだろうか?そして、戦時に限らず買春天国日本における、この買春率の高さ・・・。気持ちが通い合わない相手との性行為で、喜びがあるのだろうか?「買春意識調査」によると、「お金をが介在するセックスと介在しないセックスには違いがあると思いますか?」という質問に、頻繁に買春する人ほど、「違いがない」と考える人が多く、「違いがある」という人もその違いを肯定的にとらえている。「金を払えば自分本位でいい」「買春とは一時的なもの、つまりレンタルである」など。

 女性を、感情を持った一人の対等な人間として捉えられず、モノとしか見ていないということが、根元にある。ここが変わらなければ、性暴力も、DVも変わらず起こり続けるのだろう。男との関係をあきらめたという女の話をきくこともある。もちろん、そういう男ばかりではないが、女とそういった関係しか結べない男には、なんだか哀しさを感じる。

参考文献:池田恵理子 『加害の精神構造と戦後責任』緑風出版

(2004年11月)