スタッフエッセイ 2004年10月

台風一過

安田裕子

 10月3連休の初日、台風22号が日本列島を横断した。そのため、飛行機や新幹線の運行に影響が出、運転見合わせが相次いだ。テレビのニュースに見入っていると、新幹線に乗ることができずにホームで待つ人、新幹線に乗りはしたものの中に閉じこめられてしまった人、そんな様子がひときわ目に付いた。なぜならそれは、私もその日に新幹線で東京へ向かう予定だったからである。翌日の午前、東京である試験を受ける予定だったので、遅くともその前日の夜には東京入りするつもりだった。台風が近づく前の時間帯に移動し始めるにこしたことはなかったのだが、出発する前に済ませたい用事があり、出足が遅れてしまった。お昼も過ぎた頃、運転見合わせなど台風の影響が目立ってきた。情報を得つつ、頃合いを見て東京に向かおうと思ったが、ニュースを見ているうちに、たとえ新幹線に乗れたとしてもいつ東京に着くことができるだろうかと不安に思い始めた。むやみに疲れるのだけは避けたいと思い、結局翌日、つまり試験当日に、始発の新幹線で東京に向かうことにした。
 当日は台風一過、心配していたダイヤの乱れもなく、新幹線は予定通り動いていた。とりあえずホッと一安心。それにしても、上りのプラットホームには、人・ひと・ヒト。朝一番の新幹線乗り場とは思えない様子だった。新幹線に乗りはしたものの席に座ることはできず、私は立ったままで東京まで向かう羽目になった。さすがにしんどかった。朝早く起きたこともあって、眠気も出てきた。しかも、東京へ着けば試験を受けなくてはいけない。背に腹はかえられないと思い、座り込んだ。台風の影響をこれ程まで受けたのは初めてだった。
 そんなこんなで大変だったが、なにはともあれ試験も終わり、その日は一泊して翌日浅草見物をした。浅草では、どぜう(どじょう)料理を初めて食べた。骨を取ってごぼうと一緒にたき、卵でとじた「柳川」、骨を抜かない丸ままのどぜうを、沢山のネギと一緒にお鍋でたいた「丸なべ」、鶏肉入りのふんわりした卵焼きの「親子焼き」、どれこれも美味しかった。その店は地元の人に人気の店らしく、お昼の時間帯にはワイワイと活気に満ち溢れていた。昼食後、雷門に向かった。道中、醤油が染み込んだ焼きたての煎餅や、作りたてホカホカの芋のきんつばを頬ばりながら、観光用の人力車が走る浅草のまちを満喫した。なんとも心地よかった。3連休の最終日、雷門には人がいっぱいでとても賑やかであり、左右に連なる露店をキョロキョロ眺めながら、私はすっかりお祭り気分に浸っていた。人形焼きの実演に見入ったり、揚げたて熱々のあげまんじゅうをパクついたり。私が食べたさくらのあげまんじゅうは、さくら餡をピンクの皮で包んだもの。ほんのり薫るさくら餡が美味しかった。
 台風22号には多少ヤキモキさせられたが、色々と美味しいものを食べたりして、浅草のまちを堪能できたのは良かった。終わりよければ全て良し。これで、雷門でお祈りしたことが叶えば万々歳なんだけどな。

(2004年10月)