スタッフエッセイ 2004年7月

祭りを思い、蝉に学ぶ

安田裕子

 夏真っ盛りである。外では、みんみん蝉が夏を象徴するかのごとく、力強く鳴いている。蝉の短い一生を思うと、その鳴き声がかえってせつない。
 大阪では、梅雨があけてから天神祭までの間が一番暑いと言われている。今日と明日は天神祭。うだるような暑さも、もうそろそろひとつの山を越えるのかもしれない。夏にはイベントが盛りだくさんである。天神祭もそのひとつである。でも、私が天神祭に行ったのは一度っきり。祭りには心惹かれるが、人混みを思うと少し尻込みしてしまう。
 もちろん、祭りそのものは好きだ。小学校の頃、毎年楽しみにしていた地域の祭りを懐かしく思い出す。家から徒歩3分、スーパー前の広場で開かれる夏祭りが、本当に大好きだった。祭りの日は、昼を過ぎた頃から準備が始められる。豆電球が等間隔に並んだコードが木や電柱に渡しかけられ、夜店があちこち組み立てられる。日が落ちてから始まる祭りが気になって仕方がなく、私は昼過ぎから、祭りの準備がされていかどうかを見に行ったりしていた。ワクワクして待ちきれず、早めに用意された晩ご飯を食べるのももどかしかしく、一秒でも早く駆けつけたくてうずうずしていた。祭り用にと親がくれた500円をお財布(普段は使わない大切な「キキララ」のお財布!)に大事にしまい、決して広くはない広場を、キョロキョロしながら夜店の間をぐるぐる巡り歩く。金魚掬い、スーパーボール掬い、ヨーヨーつり、ラムネ、綿菓子、リンゴ飴、イカ焼き、タコ焼き、お好み焼き。見ているだけで楽しかった。とりわけ、スーパーボール掬いは大好きで、私はいつも挑戦した。掬うのは上手ではなかったが、お土産にひとつだけ選んで持って帰ることができたのが、とっても嬉しかった。手にしたスーパーボールは私の宝物で、いつまでも大切にしていた。綿菓子作りにも魅せられた。「いつかは私も綿菓子をつくるお姉さんになりたい!どうやったらなれるんだろう?」と真剣に考えていた頃が懐かしい。
 心躍らせた夏祭りを振り返りながら、心の底からワクワクするって本当に素敵なことだと思う。そして改めて、忙しさにかまけて、自分を楽しませる努力を怠っている時があるなと省みる。もちろん、やりたいことをしているのだから、それは幸せなことなのだろう。ただ、忙しくても、心を亡くすようなことはしたくない。いつまでも遊び心を忘れないように。自戒を込めてそう思う。
 蝉は、短くても自分の一生を精いっぱい生きている。私も楽しみながら、がんばろう。

(2004年7月)