スタッフエッセイ 2004年7月

オルゴールの音色

小田 裕子

最近、ある女の子と出会い、しみじみと感じるような気付きを得た。
それは・・・「悲しい涙(気持)」と「懐かしい感じ」と「オルゴールの音色」はどこか似ている。きっとどこかで繋がっているんだ・・・という気付きだった。
ある面接中、無言のままともに時間を過ごしていた彼女の緊張の糸がプツリと切れ、溜め込んでいた気持が涙と一緒に込上げてきて、とめどなく溢れてきた。そして、その想いはとぎれとぎれの言葉になっては、涙でかき消された。それでも溜め込んできた想いのエネルギーは強く、彼女は一通り話し終えた。
『その後の沈黙に、彼女の悲しい悲しい想いに、どう呼応することができだろう?』『どうすれば彼女の悲しみを受け止めて、包み込むことができるだろう?』と考えるより先に私は自然に目の前のオルゴールを回していた。
『♪♪〜♪♪♪〜♪〜〜
♪♪〜♪〜♪
♪・♪〜♪・・♪・・』
彼女が「トトロかと思った・・・」と沈黙をやぶり、そのオルゴール(トトロのようで、トトロでない、千と千尋のキャラクター)を見て、少し微笑むような何ともいえない笑顔を私に向けた。
オルゴールの音色を聞きながら、彼女の悲しい悲しい想いと、涙のつたう横顔を見ながら、私はどこか懐かしいような感覚に陥った。なんだか癒されるような、穏やかな気持になっていた。彼女の体いっぱいの悲しみを目の前に、そんな心境になった自分を不思議に、なんとなく不謹慎に感じながら・・・。
その日の夜、自宅でふと気付いたのだ。「悲しい涙(気持)と、懐かしい感じと、オルゴールの音色は似ている、どこか繋がっているんだ・・・」と。「悲しい涙」と「懐かしい感じ」と「オルゴールの音色」が共鳴し合ったからこそ、あの時のオルゴールの音色はあんなに魅力的な音色だったんだと。妙に納得した。
そういえば、人は緩まないと涙を流せないし、悲しいと実感することは難しい。しんどい真っ只中にある時は緊張し、戦っている状態なので緩むことはできず、心から悲しむことはできないのだろう。そうすると、充分に悲しむこと、それを表現できることは、人が癒されて行く過程の中でとても重要なこととなるし、またそのことが周りを緩ますこと、癒すことにもつながるのではないだろうか。最近の"ノリ"(流行)としては、充分に悲しむこと、泣くことは時として暗い、湿っぽいとして排除されることが多いようだが、とても大事なことなのだなぁと「彼女の涙」と「オルゴールの音色」に改めて気付かされた。「オルゴールの音色」が癒し系とされているのは、その音色が悲しさと懐かしさを喚起させ、人を緩ませるからではないだろうか。そして、そこには悲しむことを必要とする(救心する)人の心理が隠されているのではないだろうか。

(2004年7月)