スタッフエッセイ 2004年4月

おいしい春

下地久美子

 春が来た。私は1年で、この季節がいちばん好きだ。庭には、可愛いチューリップが花盛りだし、桜前線が急ぎ足で過ぎたあと、街中は、のどかな空気につつまれる。デパートのウインドウには、パステルカラーの洋服が並び、目を楽しませてくれる。
 なかでも、春をいちばん感じさせてくれるのは、スーパーの野菜売場だろう。温室栽培の隆盛で、すっかり季節感のなくなった野菜たちだが、春は、ひと味違う。まず、春野菜の王様は、たけのこ。掘りたてのたけのこは、水煮とはちがって、ほんのり甘い。ここはやっぱり若竹煮かな。ちょっとがんばって、木の芽和えも美味しい。そこへいくと、菜の花は、女王様ってとこか。基本は、胡麻和えだけど、たまには、オリーブオイルでいためて、パスタと合わせるのも相性抜群。食卓に、春の風を運んでくれる。
 最近、私が気に入っているのは、スナップエンドウ。軽くいためてしゃきしゃきした歯ごたえを楽しむ。塩茹でしただけのソラマメやグリーピースの豆ごはんも好きだ。豆のイソフラボンは、女性の美容と健康にいいらしいから、たっぷり摂りたい。
 あと、やはり春と言えば、タラの芽のてんぷら。フキや葉ごぼうのサッと煮。こんなおかずが並んだ日には、ああ、日本に生まれてよかったとしみじみ思う。
 子どもの頃はそうでもなかったが、年と共に、野菜が好きになってきた。特に、素材をそのまま味わうのがいい。新キャベツや新たまねぎは、サラダに限る。そういえば、水菜や白菜も、生で食べるのが美味しい。この頃、凝っているのは、ベビーリーフという、レストランのサラダに出てくるような葉っぱの詰め合わせ。洗うだけで食べられるのが、不精な私にぴったり。その葉っぱの上に、冷奴をのっけて食べる。ちょっと贅沢したい日は、お刺身の表面をサッと焼いてトッピングすると、洒落た一品になる。先日、ふらっと立ち寄ったカフェで、サラダ丼を食べてから、不思議と、ごはんとサラダって合うんだと、新発見。これは、ポスト牛丼の座を狙えるかも。
 おいしい野菜に出会うと、なぜか心が落ち着くのは、どうしてだろう。逆に、野菜が不足すると、イライラするから、人間の体は正直だ。気分が晴れない日には、春野菜たっぷりのスープを食べよう。きっと、ほっこりするから・・・。ぜひ試してみてはいかが。

(2004年4月)