スタッフエッセイ 2004年2月

好き嫌いしちゃいけません 

津村 薫

 「好き嫌いなく食べるのが良い子」という価値観は、学童期の私にはプレッシャーだった。たまにしか食べないものならともかく、毎日の給食でお世話にならなければならない牛乳とバター(給食はマーガリンですね)、これが私の最も苦手とするものだったのだ。息を止めて、一気に牛乳を飲み干さなければならない苦しさ!「早く中学生になって、お弁当を食べたい」とよく願っていた。「牛乳が大好き」という友達は、エイリアンに見えた(笑)。なんでこんなものが美味しいんだ!?1番仲良しだった近所の友達は「チョコレートってさ、牛乳と一緒に食べたら、すごい美味しいねん」と言っていた。なんだか、ものすごーく立派に見えた(笑)。
 これは、大人になっても直らなかった。妊娠中は、牛乳を料理に入れたり、ヨーグルトを食べたりしたものだ。今もバターの香りがすると、それだけで貧血を起こしそうになる。今でこそ多くの店で、トマトソースのパスタにはオリーブオイルが使用されているが(クリームソースはアウト!です)、若い頃、外食のときは、「これはバターが入っていますか?」と尋ねなければならなかった。フランス料理店などに行くと大変。私の辞書には「味はバターで決まります」などという言葉はない。
 そうそう、モーニングサービスを頼む朝の喫茶店などでは、「トーストにバターを塗らないでください」とお願いせねばならないのだ。それでもうっかりとバターを塗られてしまって(こんなことを言う客は珍しいのだろう)困ってしまったことがよくあった。JR環状線・鶴橋駅の内回りホームをご存知だろうか。たまにしか利用しない駅だけれど、バターの香りがぷんぷんするお菓子屋さんが、なんとホームにあるのだ!きっと多くの人が、そのにおいにうっとりするだろうに、思わず息を止めてその付近を通過する苦しさ(笑)。もちろんのこと、バターがたっぷりきいたお菓子などは、全く手をつけない。なんだか給食の頃と変わりないじゃん(笑)。たかがバターと牛乳、されどバターと牛乳。
 なに、「好き嫌いはそれだけですか?」って?よくぞ聴いてくれました。それだけではありません(笑)。コーヒーが大の苦手なんです!現代人でコーヒーが飲めないというのは、結構キツイぞ。どこに行っても、当然のようにコーヒーを出してくださる方がとても多いのだ。「日本茶と紅茶とコーヒー、どれがよろしいですか?」と尋ねてくださったら、感激で涙にむせびそうになる(笑)。そう、私は大の紅茶・日本茶党なのだ!!お菓子は、おかきやお煎餅、お饅頭などの和菓子系を最も好む。
 それから、アルコールも大の苦手だ。しかしこれは、飲めないからと咎められるものでも(男性はこうはいかないだろう。気の毒だなあ。宴会で、飲めない人に無理強いをするのは、いいかげんやめようぜ!)、人に迷惑をかけるものではないので気が楽だ(私はそもそも、アルコールなしでもやかましいので、座を盛り下げる心配もないと思う・・笑)。
 娘が小さな頃、友人とお互いに子連れで食事をしていた。今は忘れてしまったが、何かの野菜を食べたがらなかった娘に「しょうがないなー」と笑ったら、「普通、怒るのにねー、そこが好きよ〜、あなたのいいところ」と友人にホメられて、唖然としたことがあった。そうか、これは長所なのね(笑)?まるで私が「嫌い、嫌い」ばかり言ってる嫌なヤツみたいだから、言っておくけれど、私は食べることが大好き!お寿司大好き、日本食大好き、シーフード大好き、果物大好き、野菜大好き、お肉もお魚も大好き。おいしく食べることの幸せはかみしめているつもりだ。嗜好品はともかくとして、ダメなのはバターと牛乳、これだけなんだから、許してくれてもいいよね。

(2004年2月)