スタッフエッセイ 2004年1月

"雪将軍"がやって来た!

小田裕子

 「滋賀県の湖北の冬はすごいよ〜湖北スタイル(滑り止めがついた湖北エリアにしか売っていない長靴に、完全防寒)が必要!」と4月のスクールカウンセラー初勤務の時から、勤務先の先生におどかされていた。しかし、去年の12月までは暖冬で、確かに体感温度の厳しさは大阪や京都とは比べられぬものがあったが、積雪はなく言うほどの寒さではなかった。ところが、年明け1月の初勤務日とうとう"雪将軍"がやって来た!
京都・大阪では全く雪は降っていなかったので、革靴と普段通りの装いで出勤したのだが、山科辺りから既に山は見事な雪化粧・・・野洲,近江八幡を越えると・・・!!"雪将軍"大暴れ!!
 田園に広がる、見渡す限りのふかふかの銀世界,見るからに寒々しく雪の重みでおじぎをする木々や凍った川,雪を含んでずっしりと垂れ下がった灰色の空,どの光景も目新しくて、道中の1時間、携帯を手放せずに写真をとり続けていた私。
忘れていた童心が一気に沸き起こってきた。いつもの道、いつもの駅、いつもの時間がその時ばかりは非現実の世界に一転する。雪が舞い散る速度にあわせて刻まれる時もゆっくり、ゆっくり、スローモーションで流れていくような気がする。そんな瞬間と目に映る世界が私はとても大好きだ。
 そんなどこか懐かしいようなほくほくした気持を膨らませながら、いつもの駅に降り立った。普段なら学校まで徒歩10分。しかし、今日は道が・・・無い・・・。遠くに除雪車の姿が見える。どうやら生徒が通学した時間帯以降にかなりの雪が降ったらしい。膝付近まで積もった道なき道をひたすら歩き、車道に出て牛歩というより亀の歩みで滑らぬようにひやひやしながらなんとか学校に辿り着いた。
車窓から雪景色を見るお客さん的な雪とのかかわりと日常生活の中での雪との格闘を体感し、現実はなかなか厳しい・・・とやや夢(非現実の世界)から覚める思いであった。
 子どもの頃に大雪が降ると車が使えない、通勤に困ると嘆いていた大人の心境が悲しくも分かるような気がした。私は幼い頃から寒いのが苦手で(寒いと悲しくなる。きっと前世は冬眠する生き物だったのだと思う)、冬の朝の登校しぶりはつきものだった。「雪が降っていないのに寒いなんて許せない!!信じられない!!」と登校する気が失せたものだ。そんな私の性質を利用して、父親は、「おっ雪だ!雪が積もってる!」と小芝居をして私を床から飛び起こさせたものだった。そんな私が雪で困る大人の心境に少しでも共感できたのは、大人になった証拠なのだろうか・・・ちょっと淋しい気もする。
 しかし、スクールカウンセラーの後に、これまた湖北の母子寮でドカ雪の中を子犬のように走り回る、真っ赤なほっぺに真っ赤な手をした子ども達に出会い、セラピー室でその赤くかじかんだ手を温めてあげることが出来た時、『大人になるのも悪くないかな・・・』と感じた。
その日以来、"雪将軍"には出会っていない。今年度の終わりまでにもう一度くらいは会ってもいいかな・・・。

(2004年1月)