スタッフエッセイ 2003年11月

化粧をする

原田光恵

 高校生の頃、授業中に「私はこの年まで化粧をしたことがない。○○という化粧水をつけてるだけ。でも、こんなに肌はきれいなんだよ。皆さんの肌は、若いんだから化粧しなくても、もっときれいなんだよ。だから、化粧にうつつを抜かさずに、勉強しなさい。」と言われたことがある。その時は、うるさい先生だなぁ、と思わずに、「へぇ、化粧しない大人がいるんだ」と、そっちに感心したものだった。その頃は、大人になったら、化粧をするものなんだ、と、ずっと思っていたからだ。
さて、現在、私はその先生の年齢に近づいたんじゃないかな(もしかすると、超えたかもしれない)と思う。そして、私は化粧をしない大人になった。
 まず、何をどうすればいいのかさっぱり分からないので、化粧が出来ない、というのが本当のところだ。そんなに大袈裟に考えなくてもいいのに、と周りから言われたことがある。でも、顔の作りがひとつずつデカイ私は、そのまま色をのせていくと化粧じゃなく化け物になってしまうので、どうしても化粧の時間を大袈裟に考えてしまう。それで、面倒臭くなった。
 「大人になると化粧はするもの」と思っていたことが、「別にしなくてもいい」に変わってこの年まで来た。塗らないと顔が汚くなるよ、と言われたこともある。今思うと失礼な言葉なのだけど、聞いた時は、化粧しないといけないのかな、と悩んだものだ。でも、悩んだ時間は少しだけ。面倒臭さが勝ってしまった。私の中にあった固定観念のうちのひとつが、また取っ払えた気がする。
 自分できちんと化粧をすることは、これからもないと思うのだけど、プロに化粧をしてもらえるのなら、一度きれいな化粧顔を体験してみてもいいかな、と思ったりもする。ただ、この年まで化粧をする習慣がないと、無意識のうちに顔を触っていることが多い。それで、化粧をしても、ついうっかり忘れてしまって、色を引っ掻いてしまった、となるかもしれないな。

(2003年11月)