スタッフエッセイ 2003年8月

祖父母との思い出

前村よう子

 既に二人とも他界したが、私は母方の祖父母が大好きだった。まだ保育園児の頃から、夏休みといえば、そのほとんどを同じ姫路市内に住んでいた祖父母宅で過ごしていた。大正時代の町並みが面影を残していたその町で、取りたてて何をするでもなく、ただ毎日がゆったりと過ぎていくのを楽しんでいた。京の町屋風に手入れされた小さな和風の庭が、門から玄関まで続いており、そこに敷き詰められた小石や苔を日がな一日眺めていたり、如雨露で水をまいたり、そんなことがとにかく楽しかった(鉢植えを枯らすことが得意(?)な今の私からは想像もできない)。近くに貨物の引き込み線があり、そこを通る貨物列車を眺めに行ったり、近所の駄菓子屋さんでゆっくりとお菓子を選んだり、白髪を染めに行くという祖母に付いて行った美容院で、その様をずーっと眺めているのも楽しかった。釣りが趣味の祖父が、釣り針や釣り竿の手入れをしているのを眺めているのも楽しかった。とにかく、祖父母との暮らしは、穏やかでゆったりとした時間の流れの中にあった。
 弟は祖父母宅が苦手で、泊まりに行っても夜になると必ず泣いて母を呼んでいたので、祖父母宅には私が一人で泊まることが多かった。母方のいとこは8人居るが、私が小学校5年生の頃まではまだ生まれていなかったので、祖父母は私が一人で独占していた。お陰で生きるのがしんどかった頃、祖父母からの愛情を一身に受けることができた。
 親との関係ではかなりの葛藤を抱えてきた私が、今あるのは、祖父母と過ごしたこの時間があったからだろうと思う。二人が逝く前に「ありがとう」と伝えられなかった事だけが悔やまれる。

(2003年8月)