スタッフエッセイ 2003年7月

ニホンゴ談義〜街で感じる「あれれ?」〜

津村 薫

 日本語の乱れが嘆かれて久しいが、かくいう私も間違った表現を正しいと思い込んでいた恥ずかしい体験もあって、あまり偉そうなことは言えないのだが、買い物をしたり、外食をするときに、「あれれ?」と感じることが多い。
 まず、買い物をした金額ジャストを財布から出した場合。正解は「△■○円ちょうど頂戴します」。けれど、「△■○円お預かりします」という店員さんの多いこと。大阪人としては、「ほんなら何か返してくれんの」とツッコミたくなるが、確かにレシートは渡してくれる (笑)。
 レストランに入れば、注文の復唱で、「・・・でよろしかったですか」という問いかけ。「・・・でよろしいですか」だよねえ、やっぱり。注文した料理が運ばれてくる時も、「お待たせしました。焼肉ランチの方になります」・・・「方」?
 三千円の買い物に五千円札を出したら、「五千円からお預かりします」。・・・「から」?
 その昔のびっくり体験。、喫茶店にいたら、新しく入ってきたお客が、既にお客がいるテーブルを選ぼうとした。たまたま先客は、お手洗いにでも立っていたのだろう。新しく入ったお客は、出て行ったお客の食器を片付けていないだけだと思ったようだ。「ここ、いいですか」と店員さんに声をかけた。若いバイトの女の子は、あわてて「だめです!」。「おい!」と内心驚いたが、お客は気を悪くした様子もなく、違う席についたので、ホッとしたのを今もよく覚えている。
 ある百貨店で、ちょっとマイナーな和菓子を探していて、一軒の和菓子屋さんに近づいた。「いらっしゃいませ」と可愛い笑顔を見せる店員さん。「・・・ってお菓子を探しているんですが、置いておられますか?」と尋ねると、そこでは扱っていない商品だった。マニュアル外の出来事だったのだろう。「知りません」と一言。できれば、「あいにく当店では扱ってございませんが、宜しければ案内にお尋ねくださいませ」とか言ってくれー。 若き日にバイトをしていたケーキ屋さん。「ケーキは真夏に何時間くらい持ち歩けるのか。これから遠方の知人を訪ねるお土産にしたいので」とお客が聞いてきた。ケーキをドライアイスで冷やして持ち歩ける限度は3時間だと、私はその店で知った。それ以上になると、ドライアイスのいやなにおいが、ケーキにうつってしまうのだそうだ。それを説明した後に、若い正社員の女性の言った言葉が「責任持てませんので」。私は冷や汗。せっかく商品を買おうとしてくれているお客に、そんな言い捨て方はないだろう。「あいにく・・」と説明して、諦めてお客が立ち去るのなら、「せっかくご来店頂きましたのに、申し訳ございません。またお待ちしております。ありがとうございました」くらい言いたいものだ。当の本人はそれが失礼な発言だとも気づかず、平然としているのが悲しかった。
 美しい日本語をきちんと使えているかといえば、きっと知らない間に私も乱れているのだろうと思う。けれど、TPOをわきまえて、そうあるべき場所では、敬語をできるだけ正しく使うようにしたいものだと考えている。なぜだかそれは、厳しく親からたたきこまれた。中学卒業時のサイン帳、先生方の寄せ書きには、いずれも「とても礼儀正しかった」と書かれてある。たぶん研究所の仲間が聞いたら「ぷっ」と笑うだろうけれど 、ホントなんだぢょ(笑)!
 とはいっても、敬語なんか飛び交わなくても、暖かい雰囲気で居心地のよい店・場所というのもあるので、やはり大切なのは「気持ち」なのだと思うけれど 

(2003年7月)