スタッフエッセイ 2003年7月

サンタクロース

小田裕子

 皆さんはいつまでサンタクロースを信じていましたか?そして今も信じていますか?

唐突な季節外れの問い掛けに、驚ろいている人もいるだろう・・・。
実は、私の携帯の着信音はつい最近まで「あわてんぼうのサンタクロース」だった。
友人に「慌て過ぎやろ?!」と、つっこまれたりもしていたが、ウケ狙いの選曲ではない。
この曲を聴くと、幼い頃に感じていたクリスマス・イブの夜と明くる朝の言いようのないワクワク感と包まれている幸福感が蘇り、慌しい現実生活からふと抜け出ることができるからだ。クリスマスの感じを思い出すなら「ジングルベル」でも「清しこの夜」でもいいように思うのだが、幼心のワクワク感が蘇るのは「あわてんぼうのサンタクロース」なのだ。どうやら"サンタクロースが私のもとにやってくる"という感覚が大事なようだ。

私のもとには、小学校4年生までサンタクロースが来ていた。私の場合は翌朝、目が覚めると枕元にプレゼントが置いてあるのだ!しかし、4年生当日の夜中にサンタクロースの正体を知ってしまう…。
「アイテッ」とぶつかりながら暗闇の中を手探りし、ベットに近付いてくる父の姿…とっさに寝たふりをしたことを良く覚えている。薄々感づきつつも夢(ファンタジーの世界)が敗れる瞬間をこのとき初めて体験した。よくよく考えてみれば、プレゼントに500円玉が沿えらていたりと、あやしい点は随所にあった…。
こうしてファンタジーの世界の住人である子ども時代を卒業していくのだろう。現実社会の中で現実的に生きていくためには、この脱皮は必要なことだ。しかし、この現象にはサンタクロースの存在を信じ込ませている大人の姿が大前提にある。ファンタジーの世界を抜け出てて、現実世界にとっぷりはまっているはずの大人がサンタクロースの仕掛け人なのだ。サンタクロースという名のもとに、大人は子どもを通してもう一度ファンタジーの世界を持つことができる。大人になると、幼い頃に感じていたようなワクワク感や夢を見ることを忘れてしまう。小さい頃は、「サンタさんはどうやって世界中の子どもにプレゼントを渡してまわるのか?」と、自分の眠っている真夜中の時間に想いを馳せ、空想を膨らましたものだ。いつの間にか忘れてしまっている現実ではないもう一つの世界・・・。サンタクロースは大人になると失いがちな生きて行く上で糧となる、夢や希望を蘇らせてくれる存在なのではないだろうか?そこで、最初の問いかけに戻るわけだ・・・

実は私、未だにクリスマスの朝は枕もとを確認してしまう。「もしかしたら・・・」と思うその瞬間の感覚をいつまでも大事にしていけたらと思う。 

(2003年7月)