スタッフエッセイ 2003年6月

記憶と結びついたもの

窪田容子

 春、この季節が、以前はあまり好きではなかった。なんとなく、だるくて、ブルーな気分がした。何年前だろうか、春が好きになっている自分に気付いたのは・・・。

 小さい頃から人見知りをする方だった。クラス替えがある、新学期が苦手だった。母親によると、この時期、疲れて家でよく寝ていたらしい。その思いと、春という季節が、結びついていたのだと思う。社会人となり、春に、対人関係や環境が変わることがなくなってから、春がだんだんと好きになってきのだと思う。

 記憶は、さまざまなものと結びつく。音、におい、味、手触り、景色・・そしてそれがミックスされた季節や時間、天候など。そして、本人が気づかないうちに、ある気分を引き起こす。人は同じ季節を、同じ時間を、同じ景色の中を生きていても、見えているもの、聞こえているもの、感じているものは、人それぞれ。まったく違ったものを見、聞き、感じていることさえあるのだ。つらい体験が多ければ、つらい記憶と多くのものが結びついてしまい、中立の刺激に対しても、つらい気分が引き起こされてしまう。反対に、幸せな体験が多ければ、幸せな記憶と、多くのものが結びつき、中立の刺激に対しても、幸せな気分が引き起こされる。つらい体験と多くのものが結びついてしまっている場合は、新たに幸せな体験と結びつけ直すことも役に立つだろう。

 子ども達が、たくさんのものと、幸せな記憶を、結びつけていくことができたらいいなぁと思いながら、初夏の日差しの中、自宅までの道のり、自転車を走らせた。